31.化粧で病気を追い払う

化粧はもともと「気はい(けはひ・読み:けわい)」で、様子や雰囲気、品位、気温、匂い、兆しなどと同じ言葉でした。また顔に施す装い、現代でいう化粧には、儀礼的な側面もあり、権力者や神職者などが施すもので、邪気を払うなど特別な意味がありました。

ここ数年、病気の人やお年寄りに化粧を施すことで、病気の快復を助けたり、元気を取り戻すヒーリングメイクがブームです。女性なら誰しも経験があるかと思いますが、化粧をするということは素の自分と異なる自分に変身することができ、多少疲れていても気合いが入ったり、緊張する席でも鎧のように身を守ってくれたり。反面、メイクが決まらないと気分が沈んでしまったり。化粧一つで精神面が大きく左右されることもしばしばです。

病気や加齢で不安感やストレスが募り、気分が沈むと、五臓のはたらきにも大きく影響します。ストレスは肝のはたらきを低下させ、消化・血行・代謝・精神など、肝のコントロールするはたらきも低下します。思い悩むと脾のはたらきを低下させ、食欲不振や腹部膨満感など消化器に影響し、心身に必要なものが作れなくなってしまいます。心身に必要なものが不足すると、精神を守ったり、養ったりする心のエネルギーや血液も不足し、精神が不安定になり、不眠や健忘などの症状も現れます。憂いや悲しみは肺のエネルギーを消耗し、全身に栄養を運んだり、免疫を主る肺のはたらきが低下し、更に体調不良を引き起こします。

七情
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こんな時、プロのメイクさんにきれいにメイクをしてもらうと、よくなかった顔色も健康的な色に変えてくれ、気持ちも軽くなり、自分にも自
信が生まれます。きれいになった自分を見ることで、肝はリラックスした状態になり、はたらきがよくなります。肝のはたらきがよくなれば、血行や代謝、精神面のはたらきも促進され、心身の巡りがよくなります。一時的ではあれ、思い悩むことや憂いを忘れれば、脾・心・肺などのはたらきもよくなり、食欲が増し、できた栄養は体の隅々にまで運ばれるようになります。ちょっと元気が戻ってくると、外に出たり、散歩したり、体を動かすことも億劫でなくなり、更に消化・血行・代謝などが促進されて、病気の快復が早くなったり、元気が出て何かをしようという気が起こります。正に邪気を払う古来からの化粧と合致します。

男性は化粧などしないから関係ない、と考える方がいますが、そうではありません。髪を整えて、パジャマや部屋着からちょっとオシャレな装いに変えるだけで、気分もかなり違ってきます。

特に病気などでなくても、最近ちょっと精神的が参ってるとか、家に居ると気分が滅入る、なんて時には、ちょっとだけ(もちろんバッチリ可)オシャレして出かけてみては如何でしょう。散歩にもよい季節です。外に出ることで、楽しい発見や素敵な出会いも待っているかもしれません。

2005/05/03【熊猫芽便り112号】

 

32.病は性格から…?

ある特集記事を見ていたところ、占い関連の方々が「病気になるならないは心掛け一つ」というようなことを書いていました。例えば、こんな具合です。

頑固な人は自律神経のバランスを崩しやすく、腹痛や下痢などの消化器疾患、肩凝りや腰痛、ヒステリー球などの支えが出やすい。人の悪口や愚痴など不平不満ばかりを口にするや、自分を卑下して自信のない人は、のどの疾患に罹りやすい。あまり笑わない人は心臓疾患になりやすい。などなど。

頑固な人は、ある意味一本筋が通っているけれども、決して意見を曲げないので、他人の意見を聞く耳を持たないと、腹痛や腰痛など痛みで体が曲がる疾患に罹るのだとか。ひどい肩凝りで姿勢が前屈みになると、肺を圧迫して呼吸器疾患を併発したり、ヒステリー球など飲み込めない感覚を起こす症状になると。

これだけ聞くと、納得する人しない人、二分するのは明らかです。しかし、中国医学的に考えると、症状的にはかなり核心を突いています。

頑固ということは、言い換えれば、自分と違った意見を受け容れ難いということで、常にストレスがついて回ります。過剰なストレスや長期に渡るストレスは、肝に影響を与えて、そのバランスを崩します。肝には、血液を貯めたり、消化・血行・代謝・精神をコントロールしたり、筋肉を主るはたらきがありますが、肝のバランスが崩れると、これらのはたらきも低下します。消化に影響が出れば消化器疾患が、血行に影響が出れば肩凝りや腰痛に、肝の気の滞りはヒステリー球の原因になります。これらいわゆる過敏性大腸症候群や自律神経失調症は、中国医学では根本的原因はほぼ100%肝のバランスの崩れにあります。また、ストレスで肝に余分な熱が蓄積すると、熱いものは上に上るため、上部にある肺を襲い、肺の主る呼吸器に炎症や咳などの症状が出ます。緊張すると咳払いをしたくなったり、空咳が出ることがありますが、これがひどく現れたと考えて頂ければよいでしょう。

七情
 
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肝と肺の関係
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不平不満ばかりを口にする人も、常にストレスがあり、肝のバランスを崩すため、二次的に肺を傷めていると考えられます。五行の色体表で、肺は「金」に属し、その五志は「憂・悲」です。これらの感情が過ぎると、肺の気を消してしまいます。自分に自信のない人は常にこの感情に支配されているため、肺気を消耗して、呼吸器に症状が現れるといわれます。

五行の色体表
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あまり笑わないと心疾患になりやすいのも、五行の色体表を見れば一目瞭然です。心は「火」に属し、その五志は「喜」です。喜ぶ、すなわち笑うこと、楽しむことは、緊張を解して心の気の巡りをよくし、心のはたらきを調えます。ですから、あまり笑わないと、心気が滞ってはたらきが低下し、心臓疾患を引き起こす可能性もあるのです。でも、逆に喜びすぎは、心気を緩めすぎて必要なものを漏れ出させてしまうので注意しましょう(*^_^)b


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性格が全て病気の原因になるとは思えませんし、また置かれた立場や時代などによっても、性格の善し悪しは変わります。でも、極端な性格はどんな状況においても生きづらく、それが病気の原因になると考えられます。そして、性格だけでなく、何でも偏りはよくありません。食事然り、生活習慣然り、です。心身に不調を感じたら、ちょっと立ち止まって偏りがないかチェックするのも一つの方法かもしれませんネ…!

2005/05/15【熊猫芽便り113号】

 

33.寒熱は白黒付けられる?!

「白い食べ物は体を冷やして、黒い食べ物は体を温める」

という考え方があるそうで、これに従って食事の寒熱のバランスに気を付けている、というお話を耳にすることがあります。昔からの経験法なのか、ある地方で採れる食材に関しての分類が広まったものなのか、根拠は定かではありません。中には、漢方や中国医学の考え方だと誤解なさってる場合もあります。

中国医学や薬膳では、五行の色体表からも判るように、色や味などの感覚的なものも、五行によって分類、識別されています。しかし、寒熱は陰陽に属する二元論の範疇なので、五行とは考え方が異なります。

五行の色体表
 
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五行の色体表を見ると、色にはそれぞれ対応する臓腑があり、青→肝、赤→心、黄→脾、白→肺、黒→腎となっています。ならば、食物や生薬の色で、どの臓腑に効果があるか決まっているかといえば、残念ながら全てがそうとはいいきれません。しかし、項目が増えた分だけ、白黒だけによる分類よりは、はるかに対応するものが増えてきます。但し、対応する臓腑が分かっても、一つの臓腑に対する効能効果は多様で、これだけでは自分にあってるかどうか判断することはできません。

では、肺と関係する白い食材や生薬と、腎に関する黒いものを例にとって考えてみましょう。

白きくらげ・ゆりね・だいこんなどは、どれも肺に対するはたらきがあります。白きくらげやゆりねは、肺を潤して、のどの干燥や空咳を止めるとされます。だいこんは、余分な熱を冷まして潤いを生み、痰を切ったり、咳を抑えるといわれます。どれも肺には入り、同じ咳を止めるはたらきがありますが、咳を止める方法は異なります。寒熱を見てみると、白きくらげは寒熱どちらにも偏らない平性で、あとの二つは涼性です。

半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)の主薬である半夏(はんげ)は、半夏生などの行事でも知られるカラスビシャクの根っこで、これは有形の痰、無形の痰どちらにも使われる肺にはたらく生薬で、その他いろいろな処方に繁用されています。五虎湯(ごことう)に含まれる桑白皮(ソウハクヒ)は桑の根っこの皮で、肺の熱を取って、咳や痰を鎮めます。どちらも外見は真っ白で、肺にはたらきますが、半夏は温性、桑白皮は寒性です。

痰飲水湿
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黒ごま・こんぶは、どちらも腎にはたらきます。黒ごまは、腎の生命エネルギーや血液を補い、腸を潤して便通をよくするとされています。こんぶは、ヘドロのようになって滞った不要な水分を溶かして、水分代謝を活発にするといわれます。これらは、補うものと出すものではたらきも正反対ですが、寒熱も黒ごまは平性、こんぶは寒性と異なります。

八味地黄丸(はちみじおうがん)など地黄丸類の主薬の地黄(じおう)はジオウという生薬の根っこで、見るからに真っ黒です。八味丸に使われる地黄は生地黄(しょうじおう)といい、ただ乾燥させただけのもので、これは血液の熱を冷まし、潤いを補うはたらきがあります。しかし、六味地黄丸(ろくみじおうがん)には、この生地黄の加工品である熟地黄(じゅくじおう)が使われ、こちらは血液や腎の生命エネルギーを補うはたらきがあります。血液の熱を冷ます生地黄はもちろん寒性で、血液を補う熟地黄は微温性となります。

余談ですが、ちょっと漢方薬に詳しい方なら、八味地黄丸は温めるお薬で、六味地黄丸はそうでないのに、使用する地黄の寒熱は逆…という点に気づかれたかもしれません。これは処方全体で考えた場合、その他の生薬とのバランスや相互作用からベストとされる使用例で、誤りではありません。これについては、また別の機会にお話しすることにしましょう。詳しくお知りになりたい方は、以下をぜひ参考になさって下さい!

このように、中国医学的に見ると、寒熱を色で識別することはあまり意味がありません。また色と臓腑が対応していても、例のようにそのはたらきは異なるので、これも色だけで判断することは難しいといえます。そして、先に述べたように、全ての食材や生薬がこの法則に当てはまるわけではありません。例えば、いかは白くても肺には入りませんし、黒きくらげも腎には入りません。生薬名を蓮肉(れんにく)という蓮の実は白くても腎に入りますし、牽牛子(けんごし)と呼ばれる朝顔の種も黒くても肺に入ります。

ですから、色だけで食材の寒熱や効能効果など、全てのバランスを考えることはできませんが、青・赤・黄・白・黒の五色を一回の食事で満遍なく摂ることで、その食事がある程度バランスの取れたものかどうか見分ける目安にすることは可能です。

食事の献立を考える時、お弁当を作る時、外食する時、五色のバランスを元にしてみるのも一つの手といえるでしょう(*^_-)b

2005/05/25【熊猫芽便り114号】

 

34.心の病は血液の病気…?!

ここ数年「心の病」が社会的に注目を集めています。セルフチェック、病院情報、症状改善情報、症状改善のためのセミナーなど、メディアにもありとあらゆる情報が溢れています。

病名や症状に理解を示す人が増えた反面、それほど悪い状態でなくても、セルフチェックをしたり、診断名を聞いたことで、症状を悪化させたり、一部には病気を詐称する人もいたりして、別の問題点が指摘されているのも事実です。

先頃とある病院で、心の病と診断された人の脳の血流量を測定した所、健常人に比べて血流量が明らかに低くなるというデータが得られ、病気によっても血流量のパターンがあることが見い出されました。この研究が進めば、今まで問診だけが頼りだった心の病も、将来的には、一般の疾患と同じように、客観的に診断できると期待されています。

中国医学では、いわゆる心の病で見られるような症状は、精神活動と関係のある心・肝・腎や、心身に必要なものを作り出す脾のバランスの崩れが原因と考えます。


 
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中国医学では精神に当たるものを「神志(しんし・しんじ)」といい、腎にある生命の源である腎精から作られると考えます。腎精から作られた神志は、心に落ち着き、心のエネルギーに守られ、心の血液で養われ、肝にコントロールされて正常な精神活動を行っているとされます。有限である腎精や心のエネルギーや血液は、脾が飲食物から作り替えます。そのため、これら4つの臓腑のどれかひとつのバランスが崩れても、精神の安定が損なわれ、心の病に見られる症状が現れます。

またこれらの臓腑は血の生成と深い関係があり、心の病で脳内の血流量の低下が見られるのは最もだという気がします。


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心の病では、代表的な症状として、精神抑鬱・落ち着かない・イライラする・もの忘れ・頭がはっきりしない・やる気がない・起きるのがつらい・不眠・疲れやすい・体がだるい・食欲不振・大小便の不調などが見られます。この中の精神症状は心や肝のバランスの崩れでよく見られるものですし、頭がはっきりしない・やる気がない・起きるのがつらい・消化器症状などは脾のはたらきが低下した場合によく現れ、大小便の不調は肝・脾・腎のバランスの崩れでよく起こります。

もちろん、心の病の直接的原因は、ストレスであったり、不規則な生活であったりしますが、根本にはこれらの臓腑の崩れがあったからこそ、直接的な原因が引き金になって病を引き起こしたと考えられます。そして、その根本の原因がどのようにして作られたか追求することが、本当の治療にも繋がります。

脳の血流量の低下も、診断にはとても大きく貢献すると思われますが、なぜ血流量が低下したのかその原因を追及しなければ、また同じ症状を繰り返し発症するかもしれません。

ちょっと最近おかしいナ…と思ったら、精神的な部分に囚われず、体調全体を考えて、大元になった原因を究明して、生活環境や食生活を改善したりすることが大切です(*^_-)b

2005/06/05【熊猫芽便り115号】

 

35.季節を感じる食材で心身を健康に!

地方によって多少差はあるものの、6月も中旬になってくると、梅干しを漬ける準備が始まります。

最近では、日々の仕事の忙しさや、梅を漬ける手間、美味しい梅干しが手軽に購入できることなどから、家で梅干しを作る人は減ってきました。しかし、昔の人は、早春に梅花を愛で、初夏に梅の実の実りを収穫し、季節や天候を実感しながら梅干しを漬け、その季節に合った食べ物を食べてきました。

最近では、食材の旬を知らない人が大人の中にも大勢います。梅の実がいつなって、梅干がいつ作られるのかさえ知らない人がたくさんいます。時には、早稲の食材を摂ることもいいですが、自然の一部である人間が自然に逆らって作られた食材を口にしても、本当の意味では心も体に元気にはなりません。

薬膳には「時令禁忌」といって、季節や自然環境の変化に合わないものは摂ってはいけない、という考え方があります。例えば、夏の暑い盛りや暑い所では、体を温めるものは控え、熱を冷ますはたらきのあるものを摂るようにするとか、冬など寒い季節や寒冷地では、生ものや冷たいもの、体を冷やすものは不適当で、体を温めるものがよいとか。

六淫
 
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もし、夏の暑い時期に、体を温める羊肉やピリ辛のものを偏食していると、体に熱が籠もって気血津液など心身に必要なものを消耗し、体がバテるだけでなく、やる気がなくなったり、逆にイライラして落ち着かなくなったり、夜眠れなくなったりしてしまいます。

気血津液
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逆に、冬の寒い時期に、サラダや刺身などの生ものや、アイスなどの冷たいもの、なすやきゅうりなど体を冷やす食材を常食していると、冷え症になるだけでなく、代謝、血行、免疫、精神活動などに影響が出て、風邪を引きやすくなったり、春にアレルギーが出たり、男女とも不妊になったりすることもあります。

夏野菜やトロピカルフルーツの多くは、暑気あたりを予防したり、体の熱を冷まして水分代謝を促進したり、体を潤して余分な熱を冷ますなどのはたらきがあります。

秋以降旬になる鳥獣肉、穀類、木の実には、体を温めて必要なものを補うはたらきが強いものが、比較的多く見られます。

梅干しは、平性で、体から必要なものが漏れ出るのを防ぎ、潤いを生むはたらきがあります。梅干しの漬かる頃は、夏の盛りで、暑さやそれに伴う発汗で、必要以上にエネルギーや潤いを消耗する時期です。この時期に梅干しを食べることで、これを防ぎ、元気に夏を過ごせるわけです。また梅干しには殺菌作用もありますから、細菌の繁殖しやすい夏にはお薦めの食品です。

食材の旬を知り、一年を通してその食材がどのように成長してゆくのかを知れば、食べ物の大切さも解りますし、また食材に対する感謝も生まれます。いつも食べてる食べ物の旬や産地を知ることで、食べ物をより身近に感じて、更に元気をもらえるかも?!…です。

2005/06/15【熊猫芽便り116号】

 

36.部位が違えばはたらき違う

中国医学では、食べ物にも生薬同様、心身に対するいろいろなはたらきがあると考えます。最近の健康ブームのお陰で、こういった考え方も一般に知られるようになってきましたが、残念ながらまだまだ正しく理解されてない部分もたくさんあります。

その中のひとつに、食品の種類や科や部位によるはたらきの違いがあります。

現代医学に基づく栄養学でも、同じ科に属する食品、あるいは同じものから採れる食品であっても、含まれる栄養素の含有量に違いがあります。

例えば、ビタンミンCが豊富なピーマンはナス科の植物ですが、同じナス科に属するナスは、それほどビタミンCを含みません。また、サトイモの根茎である里芋と、茎であるズイキを比べてみると、炭水化物は里芋の方が多く、カルシウムはズイキの方が里芋の何倍も豊富です。

中国医学では、西洋医学のように成分を見るわけではありませんが、部位の特性や、成長、収穫などの時期、その他中医学的見解に基づき、はたらきに違いがあると考えます。

例えば、根を食材として頂く蓮根。この蓮根の起源植物である蓮は、中国医学では生薬として、あらゆる部分を用いますが、それぞれ性味もはたらきも異なります。

皆さんご存じの蓮根は、生薬名を藕節(ぐうせつ)といい、平性で甘・渋味、止血剤として各種出血に用います。生薬の場合は、そのまま乾燥させてあるため、煎じたり、粉にして服用しますが、生の蓮根しかない場合には、下ろして汁を搾って服用します。

中華やタイ料理などで使われる蓮の実は、蓮肉(れんにく)または蓮子(れんじ)といい、平性で甘・渋味、体力不足による下痢や不眠、滑精、おりものなどに使われます。

この蓮の実の中にある芯は、蓮子芯(れんじしん)といい、寒性で苦味、心の熱を冷まし、熱による出血を止めるはたらきがあり、熱射病や膀胱炎に使われます。

同じく、中華やタイ料理で、食材を包んで蒸すのに使われる蓮の葉は、平性で苦・渋味、荷葉(かよう)といって、暑気あたりに使用します。

蓮の花は、温性で苦・渋味、血行不良を改善し、血行不良による出血を止めるはたらきがあり、血尿や女性の月経以外の出血に使用します。

お血
 
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この他、蓮の花の芯なども生薬として利用されますが、日本では繁用されないので割愛します。

また同じ甲殻類であるカニとエビですが、性やはたらきは全く異なります。カニは寒性で、熱を冷まして血行や水分代謝を促進するはたらきがあり、骨折や打撲、また黄疸などによいとされます。エビは温性で、腎の熱エネルギーを補い、腎のエネルギー不足による足腰のだるさや痛み、精力減退、母乳の出が悪い場合によいといわれます。

このように中国医学では、個々の食材、更にはその食材の部位に着目し、それぞれのはたらきを研究し、個人の状態や症状に合わせて使用します。現代的な栄養学や、マスコミで氾濫する健康法では、いろいろな食品が誰にでもよいかのように説明されますが、個人の体質や心身の状態、また季節やその人の置かれた環境などによっても、よい食材、よい部分はは異なります。

このことを頭の片隅にちょっとでも覚えておけば、心身の不調があった時、台所にあるもので慌てず対処することができます(*^_-)b

2005/06/25【熊猫芽便り117号】

 

37.歯が強いのは両親のお陰

もう何年も前から、子供たちの歯に異変が起きているといわれています。硬いものを食べなくなった顎は小さくなり、永久歯の生えるスペースが育たなくて乱杭歯になったり、本来生えるはずのない所に歯が生えてきたり。また親知らずが生えない、更には、永久歯の元になる歯胚がなく、永久歯自体の数が不足する子までいるとか。

中国医学では、歯は腎と深い関係があります。歯は骨餘(こつよ)といわれ、骨の余りから作られると考えます。骨は腎精、すなわち両親から受け継いだ有限の腎の生命エネルギーから作られると考えます。この他、腎精からは、髄や脳、精神活動の根元である神志なども作られるとされています。


 
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五行の色体表
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歯を支えている顎は、もちろん骨でできており、両親から腎精をしっかり貰い受けていれば、噛むという顎を鍛える行為により自然と発達するはずです。しかし、親から充分な腎精を受け継がなかったり、噛まずにすむ柔らかいものばかり食べて鍛錬を怠ったりしていると、骨の余りである歯は正常に成長することができなくなります。歯胚がないタイプでは、腎精が充分受け継がれなかったと考えられますし、歯並びの悪いタイプでは鍛錬ができてなかったと考えられます。

噛むことは、脳のはたらきを活性化し、集中力を高めるということも最近では一般的になりました。昔ならガムを噛みながら競技に参加する外国人アスリートは、品がないと揶揄されたものですが、今ではそれが普通になっています。腎精から脳が作られることを考えれば、同じ腎精からできている顎や歯を鍛えることで、脳のはたらきがアップするのも当たり前といえるでしょう。

歯並びに限らす、虫歯になりやすかったり、歯が脆かったりする場合、全てではありませんが、腎精をちゃんと受け継がなかったか、あるいは小さい頃に高熱を出したり、大病をしたりして、腎精を必要以上に消耗した、ということも考えられます。

言い換えれば、受精する時に、両親のどちらか一方でも体力が落ちていたり、ストレスがあったりして、子供に腎精をちゃんと与えられなかったということがひとつ、そして消耗した腎精をきちんとフォローしてあげられなかったということが、もうひとつ考えられます。

一般的には、昔のように栄養状態や生活環境が劣悪ということはありません。それなのに、歯の限らず、最近の子供、更には成長した大人でさえも、腎精の受け渡しが不充分だったのでは…と考えられる病気や症状が多く見られます。

歯の数が揃っていて丈夫な人は、ご両親に感謝して、やがて土に返るその日まで大切にメンテナンスしてゆきましょう(*^_-)b

2005/07/05【熊猫芽便り118号】

 

38.色で長生き?!!

色が心身に与える影響を応用したカラーセラピーと呼ばれる分野があります。人間は視覚によって80〜90%の情報を得ているとされ、その視覚から得る情報の約80%は色の情報だという説もあります。そのため、色が人間の脳にはたらきかけることを応用したのがこの分野です。

例えば、暖色系と寒色系では、心理的に約3℃の温度差が感じられ、白に比べて黒は2倍近い重さを感じるとか。暑い地域では内装やインテリアに寒色系を多様したり、重いものの移動が伴う職場では、運ぶもの色を白くして稼働率を上げたり、普通の生活の中にもいろいろと取り入れられているようです。

特定の色に関しては、大まかに次のような法則があるようです。赤は新陳代謝を促進し、黄色には消化器系を調えるはたらきが、青には鎮静作用、緑にはストレス解消、リッラクス効果などが、ピンクには精神と筋肉のリラックス効果あるとのこと。

ここで注目したいのが、この個々の色の持つはたらきです。

中国医学では、五行の色体表からも判るように、青(緑)は肝、赤は心、黄は脾胃、白は肺、黒は腎など、それぞれの色には対応する臓腑があります。

五行の色体表
 
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鎮静作用、ストレス解消、リラックス効果のあるとされる青や緑は、五行の色体表では肝と関係があります。肝は木に属し、もともとリラックスを好み、ストレスを最も受けやすい臓腑です。ですから、肝と関連のある色が肝のはたらきを調えるのは最もな気がします。

赤は新陳代謝を促進して熱エネルギーを作り、冷え症などによいとされ、赤い下着を着けるだけで、冷え症が緩和されたという実験もあるそうです。この赤は五行の色体表では心と関連がありますが、心は火に属し、熱エネルギーの大元でもあるため、赤で心のはたらきを促進し、大元の火のはたらきを高めて代謝を促進すると考えられます。

消化器系を調える黄は、五行の色体表では脾と関連があり、この脾胃こそ現代医学でいう消化器系のはたらきを主っています。

もしかしたら、中国医学では四千年前から、このような効果にも気づいていたかもしれません?!

画家など、一般の人の何倍もの色を使う職業の人が、得てして長生きなのは、この色からの刺激を多く受けるからだという説もあります。色をたくさん見るということは、色だけでなく、たくさんの景色やたくさんの美しいものを見ることだと思います。そうすることは、心も豊かになり、心身の健康はもとより、お金には代えられない財産を得るということになります。

イロイロなものをしっかり見て、心豊かに健康に長生きしたいですネ♪

2005/07/15【熊猫芽便り119号】

 

39.温州みかんは肝臓病や動脈硬化を防ぐ?!

少し前、みかんの産地・静岡県三ヶ日町で行われた疫学調査で、温州みかんに含まれるβ-クリプトキサンチンが、肝機能や動脈硬化の予防によいらしいという結果がでたそうです。

三ヶ日町に住む人対象で、みかんをよく食べる人とそうでない人の肝機能と動脈硬化の状態を調査してみると、みかんをよく食べる人の方が、みかんをあまり食べない人に比べ、飲酒や糖尿病などがある場合でも、肝機能の数値が上がらず、また動脈硬化も起こりにくいという結果が出たそうです。この調査は、今後2013年まで追跡調査が行われ、最終的な結果がまとめられるとのこと。

β-クリプトキサンチンは、柑橘類に多く含まれ、抗酸化作用、粘膜強化作用、皮膚癌・大腸癌に対する抗癌作用があることがかっています。温州みかんにはオレンジの10倍にあたるβ-クリプトキサンチンが含ま
れるといわれています。

ここで着目したいのが、果たしてこれが全てのタイプの肝機能障害や動脈硬化、全ての肝機能障害や動脈硬化を起こしやすい条件に対して有効なのか、ということです。

現代医学は、細胞レベル、分子レベルなど、個々に着目し、探求する点では目を見張るものがあります。しかし、ひとつの物質に着目するが故に、それを健康管理、病気の予防、治療などに応用した場合、個人の体質や生活環境などを無視して、全てに効果があるように宣伝されてしまうことが多々あります。このため、よいとされた健康法を試して病気が悪化したとか、効果がなかった、などという報告も後を絶ちません。

例えば、一時期問題になった小柴胡湯がよい例です。小柴胡湯があるタイプの肝臓病患者に効いたことから、全ての肝臓病患者に効果があるかのように誤解され、長期連用により命を落とされた患者さんも居ました。小柴胡湯は、中国医学では本来、風邪薬としての使用が最も多く、長期連用してはいけないお薬のひとつでもあります。また、中国医学的に診断した場合のあるタイプの肝臓病に効果があるだけで、現代医学的な肝臓病全てに効くとは、四千年の歴史の中でどこにも書かれてはいません。

みかんは、生薬としては皮の部分を利用し、エネルギーの巡りをよくして、消化や水分代謝を促進するはたらきがあります。これにはみかんの皮に含まれる香りが大きく関わり、この香りはストレスなどで滞ったエネルギーの巡りをよくすると考えます。みかん以外にも、柑橘類の皮は多数利用され、中にはストレスによる肝臓のバランスの崩れを調えるはたらきのあるものもあります。

肝機能障害や動脈硬化は、中医学的には気の巡りが悪くなったり、そのせいでお血や痰飲など、病理産物が滞ったことにより起こる場合もあり、そういったタイプなら効果が期待できるかもしれません。


 
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お血
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痰飲水湿
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病気を治したり、予防する物質が発見されたり、新しいお薬が開発されることは、とてもうれしいことです。患者さんは藁にも縋る思いの場合もあるでしょう。しかし、一旦引いて見て、自分の症状やその原因、体質や置かれている環境も考慮して、本当に合っているかどうか考えることも必要ではないでしょうか?

2005/07/25【熊猫芽便り120号】

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