あし

根を利用

アシ(葦・蘆・芦)はイネ科の多年草で、温帯から熱滞にかけての河口や湿地などに群生します。茎は2~6mに成長し、幅2~3cm、長さ20~50cmの細長い葉を付けます。花は20~50cmほどの暗紫色をした円錐花序で、9~10月頃に開花します。地下茎は直径1cmほどで垂直に走り、中には一年で5m伸びるものもあります。

群生したアシは芦原を形成し、大きいものでは100haに及ぶものもあります。芦原には泥が堆積しやすく、微生物のはたらきも活発で、貝やかになどの水生生物も多く生息します。またアシの根元は、小動物の隠れ家や棲み家としても最適です。その結果、魚や水鳥なども集まり、環境の面からも大変重要な役割を果たしているといえます。かつて日本は「豊葦原瑞穂国(とよあしはらみずほのくに)」といわれ、芦原の広がる豊かな国だったことが窺えます。

アシは、洋の東西を問わず、昔から人間にとって身近な植物でした。『古事記』や『日本書紀』では、伊邪那岐命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノニコト)が国産みをするにあたり、最初に産んだ水蛭子(ヒルコ)は不完全なものであったため、葦船に乗せて流されたと記述があります。またギリシャ神話では、牧神パンに追われた妖精シュリンクスが、葦に姿を変えて身を潜める話があります。フランスの哲学者・パスカルが「人間は考える葦である」と表現したことはあまりにも有名です。

人間の生活にとってもアシは欠くことのできない植物で、昔から日本では、葦船、葦葺き屋根、葦簀、あるいは簫や篳篥のリードとして活用されています。海外では、肥料、燃料、食料、ヨシパルプ、葦ペンなどとしての利用があり、昔はクラリネットなどの木管楽器のリードにも利用されていました。

アシは「悪し」に繋がることから、ヨシとも呼ばれます。関東ではアシ、関西ではヨシと呼ばれることが多いようです。

薬用には地下茎を用います。秋に採取し、水洗いしてから輪切りにして日干しします。生薬名を蘆根(ろこん)または葦茎(いけい)といいます。

民間薬としては、利尿吐き気止め止血発汗健胃の目的で、乾燥した根を煎じて飲みます。

漢方では主に、熱症状のある場合に用います。熱病で体液を消耗し、のどの渇き、ほてりなどのある場合や、胃に熱や炎症があって吐き気のある場合、温まると悪化する咳や痰尿路感染症などに、他の生薬と合わせて使用します。

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