染色のはなし

染色の材料
アイ
【藍草】
たで科/タデ属
学名:
Polygonum tinctorium
藍草すくも
濃淡
インドシナ南部の原産といわれている。日本には飛鳥時代に中国から渡来した。その後、広く栽培され、染色、薬用として使用された。

一年草。葉は互生して長楕円形、先端はやや尖る。9月頃、上部が枝分かれして穂状の紅色の小花をつける。昔は全国各地で栽培されていたが、今では徳島県の藍生産農家と、各地でわずかにつくられるだけとなった。

藍の生葉を乾燥させて山状に積み上げ、その後水をかけて、上下をきりかえし醗酵させる。こうして3ヶ月ほどかけてスクモができあがる。スクモに灰汁・石灰・ふすまを加え、攪拌し、醗酵させ、藍の華をさかせると、染色することができる。

アカネ
【茜草】
あかね科/アカネ属
学名:
Rubia cordifolia
英名:Madder
茜草アルミ
アジアの温帯地域に広く分布し、日本では本州の南部に多くみられる。

主に、山地、野原、畑地で目にする。

根は太くひげ状で、黄色を帯びた赤色。

古代から根を染色に利用しており、最も古い赤を染める染料である。

椿灰汁の媒染で、浅緋色。アルミ媒染で、茜色を染める。

イチジク
【無花果】
くわ科/イチジク属
学名:
Ficus carica
英名:Fig tree
無花果鉄
寛永年間(1624-44)に、日本に渡来。西アジア原産の落葉小高木、また、その果実をさす。

葉は三裂拳状。茎、葉を切ると乳状の汁が出る。

ザクロ、ブドウと並び、世界的にもっとも古い果実のひとつ。

染色には、緑葉を使用。

アルミ媒染で黄色。鉄媒染で鶯色を染める。

オリーブ
モクセイ科/オリーブ属
英名:Olive オリーブ左はアルミ 中・右の濃淡は鉄
地中海地方の原産で、暖地に生育。モクセイ科の常緑小高木。江戸時代末期に日本に渡来。東海地方以西・四国・九州で植栽。小豆島(香川県)は国内最大の産地となっている。

葉は対生し、表面は濃い緑、裏面は銀灰色。初夏に黄白味がかった、芳香ある花を多数つける。

染色には、緑葉を使用。

アルミ媒染で、黄色。鉄媒染でオリーブ色を染める。

キョウチクトウ
【夾竹桃】
キョウチクトウ科/キョウチクトウ属
学名:
Nerium indicum
英名:
Sweet-scented oleander
夾竹桃アルミ
インド・中近東原産の常緑中木。中国では、葉が竹、花が桃に似ていることから『夾竹桃』の漢名が付いた。

葉は細く革質、三葉ずつ輪生。上面に光沢があり、無毛。鋸歯は無い。木から出る乳液は有毒。

染色には茎葉を使用。アルカリ水(灰汁)で煎じ、染液を採る。染液として使用する際には米酢または氷酢酸で中和し、さらに弱酸性にしてから染める。

アルミ媒染で、黄色。鉄媒染で、昆布茶色を染める。

クサギ
【臭木】
くまつづら科/クサギ属
学名:
Clerodendron tricbotomun
英名:Dreiteiliger losbaum
濃淡とも鉄 各地の山野に多く自生する落葉小高木。

葉は大きく、広卵形、対生している。茎、葉に悪臭があることから、臭木と名づけられた。夏に、赤いガクをつけた、管状五裂の白花を開く。果実は碧色。

熟した果実を利用し、水色から青色を染める。とくに媒染剤は必要としない。

また、赤いガク、緑葉を利用し、鉄媒染で銀鼠色を染める。

クチナシ
【梔子】
あかね科/クチナシ属
学名:
Gardenia jasminoides
英名:
Cape jasmine
梔子アルミ
静岡県以西の本州・四国・九州・沖縄、台湾、中国大陸南部に分布している常緑低木。果実が熟しても口を開かないことから、「口無」の和名が付いた。

葉は対生し革質で光沢がある。夏に純白の六弁花を開き、秋には紅黄色の果実がなる。

染色には、熟した果実を使用。古代から染色材料として、重用されている。

鉄媒染以外の媒染剤では、色合いに多少の変化はあるが、すべて黄色に染まる。鉄媒染では、黄緑色を染める。

クヌギ
【椚・橡】
ぶな科/コナラ属  
学名:
Quercus acutissima
英名:
Sawtooth oak
椚・橡奥から銅・アルミ
山地や丘陵地の雑木林に自生する落葉高木。古くから薪や木炭用に植栽され、また、シイタケ栽培のホタ木として利用されている。  古名を「つるばみ(橡)」といい、最も古くからの染料材である。

樹皮は灰褐色で、縦に深い不規則な裂け目が走る。葉は長楕円形で、細かい鋸歯があり、互生している。果実は「おかめどんぐり」ともいい大きく、球形でイガを具える。染色には主に、堅果を用いる。

銅媒染で橡色を染める。

サボテン
【仙人掌】
さぼてん科/サボテン
属染材料名/コチニール
学名:
Opuntia ficus-indicavar.saboten
英名:
Indian fig
仙人掌の貝殻虫左は錫 右はアルミ
サボテン科の常緑多年草。米大陸の乾燥地帯、一部はアンデス山地、森林地帯原産で、種類が多い。

サボテンに付いて繁殖する介殻虫をコチニールと称し、中米では古代から赤色を染めるのに用いられていた。

染色には、染料点で市販されているものを利用している。少量の酢酸を加えて、染液を煮出す。

アルミ媒染で紅梅色。錫媒染で桃色から赤色。銅媒染で赤紫色を染める。

サルスベリ
【猿滑・百日紅】
みそはぎ科/サルスベリ属
学名:
Lagerstroemia indica
英名:
Crape myrtle
猿滑・百日紅鉄
中国大陸南部原産の落葉中木。樹皮が薄く剥げ、猿も滑り落ちるほどに木肌がつるつるになるため、「猿滑り」と名が付いた。

葉は互生、卵形で先が鈍く尖っている。果実は径7oほどの球形。花は紅紫色、または白色の小花が群がるように咲く。

染色には枝葉を使用。

アルミ媒染で黄茶色。鉄媒染で染め重ねると、黒色を染める。  

ススキ
【薄・芒】
いね科/ススキ属
学名:
Miscanthus sinensis
英名:
Eulalia
薄・芒アルミ
イネ科の多年草。土手、荒地などに大群落をつくる。

毎年、宿根から新芽を生じ、2mほどに伸びる。葉は線状で尖り、秋、茎頭に大きい花穂をつける。「尾花」と称し、秋の七草のひとつ。

花穂が出始めた頃のものを染色に使用する。

アルミ媒染で、菜花色。銅媒染で、鶸茶色を染める。

セイタカアワダチソウ
【背高泡立草】
きく科/アキノキリンソウ属
学名:
Solidago altissima
英名:
Tall golden-rod
錫 きく科の多年草。北米原産の帰化植物。荒地や植生の破壊された場所に侵入・繁殖する。

高さ1.5〜2m。10月頃、円錐花序に黄色の頭花を多数つける。

染色には、咲き始めたころの茎葉を使用。または、最盛期の花穂を使う。

錫媒染で、鮮やかな黄色。鉄媒染で、オリーブ色を染める。

タマネギ
【玉葱】
ゆり科/ネギ属
学名:
Aallium cepa
英名:
Onion
玉葱濃淡ともアルミ
原産地はおそらく西アジア周辺。日本には明治以降に入って来た。

染色には玉葱の外皮を使用。よく染まる染材である。

アルミ媒染で赤味の黄色。鉄媒染で海松色を染める。

ツバキ
【椿】
つばき科/ツバキ属
学名:
Camellia japonica
英名:
Japanese camellia
椿奥は酸 手前濃淡は鉄
ツバキ科の常緑高木の総称。本州、四国、九州、沖縄に多い。鑑賞用の園芸品種が大変多く、一重、八重、花色の種類も多い。葉は光沢があり、皮質。

椿の灰は古代からアルミ媒染として、使用されている。染色には花を使用。

酸媒染で、桜色。鉄媒染で、銀鼠色を染める。

ノイバラ
【野茨】
ばら科/バラ属
学名:
Rrosa multiflora
英名:
Japanese rosa
難波野茨奥濃淡は鉄 手前はアルミ
バラ科の落葉半蔓性低木。各地の山野、河岸、高原などによく生えている。

高さ、約2m。茎には刺を散生。葉は羽状複葉。初夏、白色または淡い紅色の5弁の花をつける。秋には、赤色球形の小さな果実をつける。

葉が革質で光沢のあるものを、テリハノイバラという。ノイバラ、テリハノイバラ、ナニワノイバラなど、枝葉を利用し、染色する。

灰汁、アルミ、錫、酸媒染、いずれも黄茶色。鉄媒染で、黒色。花を利用して、鉄媒染で銀鼠色を染める。

ビワ
【枇杷】
ばら科/ビワ属
学名:
Eriobotrya japonica
英名:
Loquat
枇杷奥は銅 手前はアルミ
本州(東海以西)四国、九州で植栽。ばら科の常緑高木。

11月頃から、長さ10〜20pの花房を立て、経1cmほどの小花が密につく。花弁は5枚。果実は6月に熟し、黄褐色。

染色には、樹皮、枝葉を使用。

酸、錫、アルミ媒染、いずれも緋色。銅媒染で柿色〜小豆色を染める。   

フジ
【藤】
まめ科/フジ属
学名:
Wisteria floribunda
英名:
Japanese wistaria
藤奥は鉄 手前はアルミ
山野に広く自生するヤマフジや、鑑賞用で多くの園芸種がみられる。蔓性落葉木本の総称。また、ヤマトタケルノミコトが、船の艫綱に使ったのが、本種のツルだとされている。ツルから採取した繊維で藤布がつくられる他、ツル細工に利用されている。日本固有種。

花は蝶形花、紫色。葉は互生し、数羽状複葉。

染色には葉を使用。

アルミ媒染で黄色。鉄媒染で海茶色を染める。 

ベニバナ
【紅花】
きく科/ベニバナ属
学名:
Carthamus tinctorius
英名:
Safflower 
紅花奥から紅色素・黄色色素
生地は紅色素
小アジア、エジプト原産の染料・油料用植物。飛鳥時代に中国から輸入され、東北地方(特に山形県)を中心に栽培されている。

葉は広皮針形で先は尖り、周辺に刺がある。夏、紅黄色のアザミによく似た頭花をつける。染色には花弁を使用。

紅花には、黄色と赤色の色素がある。黄色は水溶性だが、紅色素はアルカリ性の水でないと、抽出できない。また、紅色素は熱によって破壊されるので、煎じることはできないし、染液を40℃以上にしてはならない。

紅色素で染重ねることによって、桃色から真紅色に染まる。

ヤシャブシ
【矢車附子】
かばのき科/ハンノキ属
学名:
Alnus firma
英名:
Japanese green alder
矢車附子鉄(濃色)
山地に多い、落葉小高木。日本固有種。

高さ5〜7m、葉は互生し、葉の縁は重鋸歯。果実は楕円形で長さ2〜2.5cm。1個ずつ直立する。樹皮は灰褐色。

果実や樹皮はタンニンを多く含むので黒色染料となる。

アルミ媒染で茶味の黄色。鉄媒染で紫黒色から黒茶色を染める。

ヤマモモ
【楊梅】
やまもも科/ヤマモモ属
学名:
Myrica rubra
英名:
Bayberry
楊梅銅
本州(関東以西)・四国・九州・沖縄に分布する。沿岸部の山野に自生する常緑高木。

葉は枝先に集まって互生し細長い、革質で光沢がある。雌雄異株。果実は球形、6〜7月ごろに暗赤色に熟し食べられる。

染色には樹皮を使用。

銅媒染で金茶色。鉄媒染で海松茶色を染める。

 

染色の道具
ガス台 笊・濾し布
染色用バット 棒温度計 (奥から)鋸・鉈・鋏
染色用バット 棒温度計 鋸・鉈・鋏
各種染色用棒 かまど  
染色用棒 かまど  
  主に木灰をつくるために使用  

 

染色の手順

1.準備した植物を水洗いし、細かく刻む。 原料の植物
2.鍋に植物を入れ、水から煮出す。 植物を煮出す
3.沸騰後30分煮出し、笊で染液を濾す。

※2-3の工程を4回〜8回繰り返し、併せたものを染液として使う。(植物により煮出す回数は異なる)

笊で濾す
4.被染物を染液に浸す。染液がまんべんなくいきわたるように、しばらくの間、糸は繰りながら、布は絶えず動かしながら染め、染液に浸したまま、2〜3時間から一晩置いておく。 染液に浸す
5.染液から糸または布を引き上げ、よく水洗いする。 1回目の水洗い
6.準備しておいた媒染液に浸す。 媒染時間は、30分。媒染により色味が変化する。

※上の画像は媒染液に浸した直後、下は30分後。

媒染液に浸した直後
媒染液に30分浸した後
7.媒染後、よく水洗いする。 媒染後の水洗い
8.再び染液に浸し、2〜3時間から一晩置いておく。 再び染色
9.染液から糸または布を引き上げ、よく水洗いし陰干しする。

※濃色にする為には、4〜8の工程を繰り返す。

最後の水洗い
陰干し

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