| 四診概論 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 四診(ししん)とは、望診(ぼうしん)、聞診(ぶんしん)、切診(せっしん)、問診(もんしん)の4つの診察方法の総称で、疾病の鑑別の基本であり、最も重要なものです。四診に五官を駆使し、人体の全体または局所的な変化を確認します。これらを総合して判断することにより、より客観的に疾病を診ることができます。
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| 望診 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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望診とは、人体の全体あるいは局所的な変化や、精神状態、排泄物、分泌物などを視覚的に観察することです。色、形、状態などあらゆる変化を診るわけですから、健康な場合の状態をしっかり把握しておくことが重要です。
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| 神を診る(望神) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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神には二つの意味があります。狭義では精神活動そのもの、広義ではすべての生理活動を主宰してそれを体外に表現するものという意味があります。望神(ぼうしん)とは、この両者を観察することを指します。 神は生命活動の現れであり、精神は肉体と切り離して考えることはできません。心身が充実していきいきとしている様は神が健やかな状態で有神(ゆうしん)といいます。反対に、生気が無く、ぼんやりしたような状態は神が疲弊している状態で無神(むしん)といいます。 また、神はもともと先天之精である腎精より作られ、後天之本である脾気によって養われていますから、腎精や脾気が充実していれば有神、不足していれば無神の状態になりやすいと考えられます。気・精・神は 生きてゆくための重要な三要素で、これらが充実していることが健康であり、不足すると心身が衰えやすく、老化しやすいと考えることができます。 有神か無神かを見分ける最も簡単な方法は、目を見ることです。「目は心の窓」ともいわれるように、神が充実していればいきいきとした輝きを放ちますが、不足があれば鮮度の落ちた魚のようにどんよりします。この他、表情が豊かで感情表現がしっかりできるか、きちんと会話ができるか、人の問い掛けに反応できるか、声や呼吸に力があるか、体がしっかりしているかなどからも鑑別することができます。
この他、得神(とくしん)、失神(しっしん)、假神(かしん)という分類方法もあります。 得神は有神と、失神は無神と同じ意味です。 假神は、実際は無神なのに表面上は有神のように見える状態を指します。これは臨終の際に現れる特有の状態で、決して吉兆ではありません。重病人が臨終前、急に目の輝きが戻り、顔色もよく、口調もしっかりして、食欲が出るなど、一見元気になったように見えることがあります。これは蝋燭の火が消える直前、一瞬明るくなる現象に似ているため、古い時代の人は「残灯復明」「回光反照」と表現しましたが、正に陰陽が分離する直前の現象です。陰陽が分離してしまうと人は死を迎えます。
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| 顔色を診る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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面色とは顔色のことです。ひとことで顔色といいますが、実際は顔の色調変化と、肌のつやの明度の観察を行います。古い時代の人は、顔色には五行の色体表にある青・赤・黄・白・黒の五色があると考え、特に顕著に表れている色を判断材料にして診断を行いました。
つまり、青は肝、赤は心、黄は脾、白は肺、黒は腎という風にです。 五行の色体表を見ると、顔は心と最も関係深いことが分かりますが、実は顔には全ての臓腑の影響が現れます。顔の色調や肌のつやを診ることで、 各臓腑の気血や邪気の盛衰を知ることができます。また神の有無も見て取ることができます。 一般には、顔色が鮮明でつやがあれば病は軽く、臓腑気血の衰えも少ないと判断でき、治療しやすく、予後も良好であるといえます。逆に、顔色が暗くくすみ、つやもなくやつれていれば、病は重く、臓腑気血の衰えがあり、治療も予後も簡単ではないと判断できます。 顔の各部位と臓腑には以下のような関係があるとされています。
顔色を見るには、正常な顔色である常色(じょうしょく)と、疾病に罹患した時に現れる病色(びょうしょく)とを把握しておかなければなりません。 常色は、健康な状態の顔色であり、肌色が明るく、つやがあり、潤った状態を指します。気・血・津液・精・神が充実し、臓腑機能も正常な状態といえますが、この常色にも個人差があります。人種、遺伝、住環境などにより個人の常色は決定されますが、その人の持つ一生変わることのない顔色を主色(しゅしょく)といいます。また時間、季節、天候などに影響されて顔色は変化しますが、これを客色(きゃくしょく)といいます。これらはみな生理現象で、常色の一部です。 病色は、常色以外の全ての異常な顔色を指します。 五色に基づく病の判断基準を表にまとめます。
病であっても比較的顔色がいい場合、臓腑や精気の衰えがさほどではなく、胃気も充分と判断でき、予後が良好と考えられます。しかし、病がそれほどでないのに顔色が悪い場合は、臓腑や精気が衰え、胃気も枯渇していると判断でき、この場合は治療が困難なことを示します。 肝に病がある場合、顔色が青っぽくなるのは当たり前の現象です。ところが、肝に病があるにも関わらず、顔色が黒かったり、赤かったりすることもあります。この場合、黒は腎の色で「水生木」、赤は心の色で「木生火」となり、相生の関係にある臓腑との合併症があることがわかります。これを順証(じゅんしょう)といいます。同じく別の臓腑との合併症がある場合でも、肝の病なのに黄色かったり、白かったりすると、「木克土」、「金克木」があると考えられます。この場合は相剋の関係にある脾や肺とそれぞれ関係があると考えられ、逆証(ぎゃくしょう)といいます。 五色に基づく診断は、この他、皮膚を観察する場合にも用いられます。
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| 形態を診る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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形態や物腰を見ることは、診断において重要な要素の一つです。五行の色体表からも分かるように、人体の五臓には、それぞれと関係深い器官があります。また体の強弱、肉付き、姿勢の善し悪し、物腰などは、臓腑機能や気血津液の状態、陰陽のバランス、病勢や邪気の所在を確認するのに非常に役立ちます。 形態を診る上で重要なものは、体の強弱、肉付き、肢体、体型などの状況です。 骨格がしっかりしていて、胸板が厚く、肉付きが良くて充実し、肌の潤いや色つやが良い状態であれば、強健であるといえます。この場合、臓腑も充実し、気血も旺盛で、予後も良好と考えられます。しかし、骨格が弱々しく、胸板も薄っぺらな感じで、筋肉や痩せこけ、肌は乾燥しているようであれば、衰弱しているといえます。この場合は、臓腑機能も衰退し、気血も不足していて、病も多く、予後は予断を許さない状態ということができます。 太っていたり、痩せていたりするのは、決して正常な状態とはいえません。また、猫背、鳩胸、O脚をはじめ胸部、腹部、四肢などの極端な形態の変化は、臓腑機能や気血津液の状態、陰陽のバランス、病勢や邪気の所在を推測する手掛かりとなります。 個人の物腰や動作と病気にも密接な関係があり、これも大事な判断材料になります。明朗快活で、動きが俊敏だったり、落ち着きがない場合は、陽証、熱証、実証であり、物静かで内向的、動きが鈍いようであれば、陰証、寒証、虚証であると判断できます。更には、咳の仕方ひとつを取っても、虚実、気血津液の状態をある程度把握することが可能です。
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| 頭頚・五官九竅を診る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ここでいう頭とは頭と顔を、頚とは頚部を、五官とは目・舌・口・鼻・耳を指し、九竅(きゅうきょう)とは人体にある9つの穴のことで、2つの目・2つの鼻の穴・2つの耳の穴・口・尿道と生殖器(前陰)・肛門(後陰)を指します。臓腑学説からも判るように、体の内側にある臓腑は、体の表面にある五官や九竅と密接な関係があります。またこれらの器官のほとんどは顔に集中しており、首から上を観察することはとても重要です。
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| 頭頚を診る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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頭を見る時のポイントは、頭部の奇形の有無、大泉門、頭の揺れ、顔の腫れ、耳下の脹れ、顔の歪みなどです。大泉門とは、胎児が産道を通る際、頭の形がある程度自由に変えられるようついている頭蓋骨の間隙のことで、1歳半頃にはなくなるのが普通です。頭部に奇形がある場合は、先天稟賦不足と考えられ、腎精不足があると判断することができます。生後6ヶ月を過ぎても大門線に陥没があれば、ほとんどが虚証といえます。 髪の毛は、色艶や形状、脱毛などの状態を観察します。黒々としていてふさふさで光沢があれば、腎気が旺盛で、精血が充足しているといえます。 首では、首の筋肉の状態、頸動脈、腫れやしこりを観察します。
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| 目を診る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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目は肝の竅であり、また「五臓六腑の精気は皆目に上注して目の精になる」ともいわれ、
視力は五臓六腑の生理機能と切っても切れない関係があるといえます。目を見ることは望神において重要であることは既に勉強しました。この他、目からは五臓の変化や病気の診断においても大事で、目を見ることでいろいろな情報を得ることができます。
下図のように、目の各部位は、各臓腑の状態を映し出します。光彩は肝、瞳孔は腎、白目は肺、目頭と目尻は心、上下の瞼は脾となります。
目を見る時、最初に見なければならないのは眼神(がんしん)です。望神と似た言葉ですが、同様に目の輝きをはじめとする全体的な健康状態をチェックすることです。 白目と黒目の境がはっきりしているか、光彩の筋肉がしっかりしているか、光をちゃんと感知しているか、泪や目脂はどうか、ものははっきりと見えているかなどです。これらが正常であれば眼が有神といい、健康であるか、病気であっても治療は比較的簡単で、予後も良好といえます。反対に、目が濁って白目と黒目の境がはっきりしない、光彩の筋肉のしまりがないか消失、光に鈍感か感知できない、泪や目脂が異常である、ものがはっきり見えないなどの症状があれば眼が無神といい、病気で治療も予後も難しい状態す。 次に見るのは目の色です。ひとつの方法として、五行の色体表を用い、目が青い場合には肝に、赤い場合は心に、黄色い場合は脾に、白い場合は肺に、黒い場合には腎に、それぞれ病があると取ることができます。但し、これに拘り過ぎると判断を誤るので、参考程度にしましょう。 また民族や個人による違いを考慮することも大切です。 この他、各部位の色の変化、眼球、瞳孔、瞼、眼窩、目周辺の筋肉、目の形、目の動き、肉芽や炎症の形状、目に関する状態を観察します。
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| 耳を診る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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耳は腎の竅であると同時に、いろいろな臓腑の経絡が集まる場所でもあります。従って耳を見ることは、診断学において重要な意味を持ちます。現代における耳を用いた鍼治療では、臓腑や身体と関連のある耳の部分を区別して治療を施します。 耳を見る場合、主に耳の形や色艶、状態、分泌物の有無や変化を観察します。健康な人の耳は、肉厚で色艶がよく、先天腎陰が充実していることを表しています。耳垢は、普通、外耳道の耳垢腺から分泌される分泌物に、皮脂腺からの分泌物や、空気中のほこり、皮膚のはがれ落ちたかすが混ざったもので、耳垢が多すぎると耳の閉塞を起こします。
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| 鼻を診る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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鼻は肺の竅であり、脾胃の経絡とも関係深い器官です。鼻を見る場合、注意すべきはその色艶と形態です。
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| 口唇を診る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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脾は口に開竅し、その華は唇にあります。胃の経絡は口唇部を通っているので、口唇を見ることで脾胃の病変を見て取ることができます。一般的には、形、色、潤いなどの変化を観察します。 唇の色の観察は、基本的には顔色準じます。唇の粘膜は薄く透明なので、色の変化がわかりやすく、望診にはとても役に立ちます。 唇の色が赤く潤っているのが健常人の特徴で、胃気が充足し、気血の調和が取れているといえます。
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| 歯・歯茎を診る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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歯は骨の余りであり、この骨を主るのは腎です。また胃と大腸の経絡は歯茎を通っています。従って、歯や歯茎を見ること
で、腎・胃・大腸の病気による変化を見るこができます。特に、ある種の診断には重要で、熱による症状や熱によるの津液の消耗を見る上では力を発揮します。 歯や歯茎を見る場合、潤いの有無、色艶、形状、歯ぎしりなどを観察します。歯が純白で艶やかなのは、津液が十分にあって腎気が充実していることを表します。仮に病気であっても、津液までは傷ついてないことを示します。
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| 咽喉を診る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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咽喉は肺と胃の門戸であり、呼吸と飲食にとって重要な器官であるといえます。諸々の経脈は咽喉を通っていることから、多くの臓腑の病理変化を咽喉から観察することもできます。特に、肺・胃・腎の病を見る場合、診断に大きな影響を与えます。 咽喉を見る場合には、色艶、潤い、形状、偽膜などを観察します。正常な咽喉は、淡紅色で艶があり、潤っていて、腫れや痛みがなく、呼吸、発声、飲食物の嚥下などが全てスムーズに行われます。咽喉の疾患に関しては種類が多いので、ここでは一般的なものだけを紹介します。
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| 下竅を診る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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下竅とは前陰と後陰を指し、前陰とは生殖器と尿道、後陰とは肛門のことを表します。腎は二陰に開竅し、大小便の二便を司ります。男性器は腎に通じ、女性器は子宮に通じて腎とも関連深く、尿道は膀胱に通じます。また下竅にはいろいろな経絡が集り、通過してゆきます。従って、下竅を見ることは臓腑経絡の病理変化を観察する上で非常に重要といえます。
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| 皮膚を診る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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皮膚は全身の表面にあって人体を垣根のように覆い、その中を衛気が循行し、臓腑と内合しています。外邪は、最初に皮膚表面に影し、そして臓腑や気血津液に影響を与えます。また臓腑気血の状態は経絡を通し、症状として皮膚表面に反映されます。言い換えれば、皮膚の色艶や形態の異常を見ることで、邪気の性質、気血津液の盛衰、内臓の病変、予後の判断などを知ることができます。 皮膚を診る場合、皮膚や体毛の色艶と潤い、形状、斑点や湿疹などの皮膚の変化を観察します。皮膚の色艶や目で見て判る五色の変化は、基本的に前出の通りです。この他、特殊な場合もあるので注意しましょう。
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| 絡脈と爪を診る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ここでいう絡脈とは、三歳以下の小児のものを指します。成人の脈診に関しては、切診で詳しく説明します。小児は皮膚が薄くて軟らかいので、人差し指で脉を見ることができます。しかし、泣いたり、動いたりすると見にくいので、その場合には、魚際(ぎょさい)という親指の付け根から掌にかけての盛り上がりを観察します。
人差し指の脉の見方について説明します。指先から第一関節までを命関、第一関節と第二関節の間を気関、第二関節から指の付け根までを風関といいます。脉を見る時は、明るい方に向けて供を抱き、左手で子供の人差し指を支え、右手の親指で命関から風関に向かって、何度か脉の部分をさすって観察します。 正常な絡脈の色は、淡紅色か黄色がかったピンク色で、風関部分にうっすら判る程度です。多くは、斜形で一筋であり、適度な太さがあります。但し、太さや長さは、気温の影響を受けやすく、暑いと太く長くなり、寒いと補足短くなります。また長さは年齢によっても変化し、一歳以下では長く、年齢が増すとともに短くなる傾向にあります。脉の深浅や色艶、形状により、邪気の性質、表裏、寒熱、虚実、陰陽を知ることができます。 爪は筋余といわれ、気血と関連深い肝胆の状態が現れやすい部分です。正常な爪は、赤みがたったピンク色で光沢があり、適度な潤いと硬さがあって弧を描いています。先端を押して放せば、血色はすぐ戻ります。これは気血が充分にあって、流れも良いことを示します。爪の色艶、形状、圧力を加えた状態などを観察することにより、気血の状態を把握することができます。
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| 排泄物と分泌物を診る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 排泄物とは人体が体外に排出する代謝産物、分泌物とは五官九竅から分泌される液体のことで、病理的な状況下では分泌物はしばしば量が増えます。この二つをまとめて排出物といいます。排出物には、大小便、経血、おりもの、嘔吐物、痰、鼻水、唾液、涎、泪、汗、膿などがあります。排出物は、その色、形状、質、量の変化などを観察することで、臓腑の病変や邪気の性質を知ることができます。 痰は肺や気道に排出される粘液で、ねばねばしていて汚いものを痰、薄くて比較的さらさらしたものを飲といい、どちらも有形の痰に属します。鼻水は鼻腔に分泌される粘液、唾液はは口腔内に分泌される泡沫を含む粘液、涎は同様に口腔内に分泌される希薄な粘液です。痰や鼻水は肺と関係の深いものですが、「脾は生痰の源、肺は貯痰の器」といわれ、痰は脾の状態を知る上でも重要になります。唾液は腎、涎は脾と関連があり、それぞれ臓腑の状態を把握することができます。また形状、色、量から寒熱、虚実、邪気の種類などを知ることができます。 嘔吐は胃気上逆により起こる現象で、嘔吐物は飲食物、希薄な水分、痰、涎、膿や血液の混じったものなど多種多様です。嘔吐物の色、形状、質を見ることで、胃気上逆の原因を探ることができます。 その他の排出物についての詳細は、別に詳しく説明します。
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| 舌を診る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 舌診は古典の中にも既に記載があり、13世紀には舌診の専門書ができて、16世紀に入るととても重要視されるようになり、急速な発展を遂げてきました。現在、舌診は、中医学独特の診断方法として理論的に確立されています。 現代医学における各種検査のように、中医の臨床における舌診は、客観性のある数少ない根拠のひとつといえます。中医学的な診断には、八綱弁証、気血津液弁証、臓腑弁証はじめ、衛気営血弁証、六経弁証、三焦弁証などいろいろな診断方法がありますが、どれにおいても舌診は重要な位置を占めています。舌象の変化は、正気の盛衰、病邪の深浅、邪気の性質、病気の進退などを客観的に反映するため、病気の発展、変化、予後などを判断でき、治療に生かすことができます。但し、例外的に、重病人であっても舌に変化が現れない場合や、健常人なのに舌に異常が現れる場合もあるので注意深く診断することが重要です。 正気の盛衰を見るには、舌の全体像を観察します。舌自体が赤みがかったピンク色で適度の潤いがあれば、気血が旺盛であるといえます。白っぽい感じなら気血の虚衰が見て取れます。苔が白色で薄く、潤っていれば、胃気が旺盛といえます。しかし、苔がなくて鏡のようにテラテラしていると、胃気や胃陰の枯渇があると判断できます。 病邪の深浅は、苔の観察により判断することができます。苔が薄い場合、多くは疾病の初期で、病位は浅く、病邪は表にあるといえます。苔が厚い場合、病邪は裏にあって、病位は深いといえます。この他、舌自体の色が深い赤色なら、熱邪が奥深くに入り込み、重篤であると判断できます。 邪気の性質は、舌全体で判断します。例えば、苔が黄色ければ熱邪、白ければ寒邪といえますし、べったりした苔が厚くついていれば食滞や痰濁といえます。舌が曲がっている場合は風邪、紫色の斑点があればお血といえます。 病情の進退は、苔の変化により判断します。苔の色と質などの変化は、往々にして正邪の消長、病情の進退と対応しているといえます。外感熱病では変化が特別早いのですが、内傷によるいろいろな病気同様、病状の進退が舌に反映されます。例えば、苔の色が白色から黄色に変わったり、更に進んで灰黒色になるのは、邪気が表から裏に入ったことを、苔の厚みが厚くなるのは寒から熱に変化したことを、潤っていた苔が乾燥するのは、徐々に熱が壮んになって津液が消耗していることを表しています。逆に、厚かった苔が薄くなり、だんだん潤ってくるのは、徐々に病邪が退いて津液が回復していることを示します。但し、臨床上特殊な状況として、重病であるにも関わらず舌象に大きな変化がない場合や、健常人なのに舌象が以上な場合もあります。ですから、舌を観察する場合には、四診合参を念頭に全体的に分析をして、的確な診断をすることが重要です。 ここで、舌の構造、臓腑の関係、舌診の原理についてお話ししましょう。 舌とは、口腔の底、下顎骨、舌骨に付いいる器官で、横紋筋の表面を粘膜が覆った平らな突起物です。舌には裏表があり、中医学では、表を舌面、裏を舌底と呼びます。舌の表面には、三種の舌乳頭があり、それぞれ絲状乳頭、茸状乳頭、葉状乳頭と呼ばれます。これらは、味覚を感知したり、声を調節したり、食物を撹拌したりするはたらきがあります。舌のこのような構造は、五臓六腑・気血津液と密接な関係があります。 舌と臓腑は、主に経絡と経筋により、直接的に或いは間接的に関係しています。臓腑の精気が舌を栄養しているため、臓腑の病理変化や精気の変化が必然的に舌象に反映されるのです。臓腑の中でも、心、脾、胃はそれぞれ「舌は心の苗竅」「舌は脾の外候」「舌苔は胃気の薫蒸したもの」という表現があることからも、特に密接であることが見て取れます。これらの表現は、どれも舌を観察することで、心、脾、胃の状態を把握できるということを表しています。 舌質の血管は最も豊富で、心が結脈を主っていることと関係があります。舌がスムーズに、声を調節したり、言語を形成できるのは、心が神志を主っていることとも関係があります。心は五臓六腑を統べる君主の官で、全身臓腑気血の状態を主催しているため、全身臓腑気血の状態が心に反映されます。従って、臓腑気血の疾病は、必然心を通して舌に反映されるといえます。 舌は味覚を感じ、食欲に影響します。これは脾の運化と胃の受納に関係があります。脾胃は後天の本であり、言い換えれば気血を作り出す源であるため、全身の全ての器官に少なからず影響を及ぼします。このことから、舌象は単に脾胃の状態を反映しているのではなく、全身の気血津液の盛衰を表しているといえます。それだけでなく、五臓六腑の精はみな腎にも帰属します。腎は先天の本であり、その経脈は舌と関連があります。つまり五臓六腑の精気は、後天の脾胃と先天の腎を通して舌と関係し、五臓六腑の病理変化を知ることができるといえます。 舌の表を見る場合、具体的には二通りの区分けができます。一つは胃経由来の区分けで、舌尖が上脘、中央が中脘、舌根が下脘とするものです。もう一つは五臓六腑由来の区分けで、舌尖が心肺、中央が脾胃、側面が肝胆、舌根が腎とするものです。後者の区分けでは、肝胆を更に、左側面が肝、右側面が胆とするものもあります。再度確認しますが、臨床上は四診合参が大事です。あまり拘りすぎると診断に支障を来すので注意しましょう。 ![]()
舌診を行う際の注意点をお話しします。
照明などの明るさ、顔の陰影などは、舌診に大きく影響します。常に一定の条件で、見間違いのないよう注意する必要があります。最も良いのは、柔らかな自然光が十分な場所での観察です。もし、夜や暗い場所で観察するのであれば、日光に近い色調の電球の下で観察し、後日必ず日中に再度観察するようにします。どの場合でも、壁、窓枠、扉など周辺の色が反射しない場所で観察することが大切です。
舌診を受ける側は、背筋を伸ばした姿勢で、できるだけ口を開けて、舌がリラックスした状態で自然に舌が口の外に向かって伸びるようにしっかりと出します。舌が緊張していたり、巻いていたり、反っていたり、余分な力が入っていたり、あるいは舌を長時間出していたりすると、どれも舌の血液循環に影響し、舌が鬱血して正しい判断ができなくなります。このような場合は、舌がリラックスした状態で、左右に広がり、下に垂れ下がるよう受け手に何度が舌を出す練習をさせるとよいでしょう。
舌診は一定の順序に従って行う習慣を付けましょう。一般的には、まず舌苔の有無、厚み、腐膩、色、潤いなどを観察し、次に舌体の色艶、斑点、胖痩、老嫩、形態などを観察します。方向としては、舌尖から舌根に向かって観察するのがいいでしょう。
飲食は舌診に大きな影響を与えます。飲食物や薬物で舌体が染まることを染苔といいます。例えば、牛乳を飲んだ後や子供が母乳を飲んだ後は、大抵舌体に白色の付着物が見られます。ナッツ類、豆類など脂肪分の多いものを摂った後は、短時間ではあるものの舌面に黄白色の滓が付着し、腐膩苔のように見えることがあります。お茶、コーヒー、葡萄果汁、お酒や、鉄分を含むサプリメントなどを摂った後は、往々にして舌苔が黒褐色や茶褐色になることがあります。卵黄、柑橘類、柿、色のある果物、着色したお菓子、黄連やリボフラビン(ビタミンB2)などの薬物を摂った後は、舌苔が黄色くなります。この他、飲食物による摩擦や舌の苔を刮げる習慣のある場合、舌苔の厚みが変化します。冷たいものや熱いものの過食や、刺激性のものを摂った後は、舌の色が変化します。口呼吸や水を飲んだ直後は、舌面の潤いに変化が現れます。これら一つ一つに注意して舌診を行いましょう。
正常な舌象は、季節や時間の変化によって微妙に変化します。例えば、夏の蒸し暑い時期には、舌苔は厚くなったり、淡黄色になったりすることがあります。秋の乾燥して気温の下がる時期には、舌苔は薄く乾燥することがあります。冬の寒さ厳しい時期には、舌は常に湿り気を帯びます。また朝は舌苔が厚く、日中食事をした後には薄くなったりします。起床した直後は、舌の色は暗く、動いた後は赤くなります。
健常人でも、年齢や体質の違いから舌象は一致しないことがあります。高齢者は気血が徐々に不足するため、裂紋や舌乳頭が萎縮が見られる場合があります。小児は舌の疾患に罹りやすく、白屑や剥苔が見られる場合があります。太っている人の舌の多くは大きくて舌質が淡です。反対に体が痩せている人は、舌も痩せていて赤みが強いのが特徴です。しかしこれらは参考程度で、臨床上は具体的な状況と合わせて考える必要があります。
この他、舌面の潤い、苔の密度、苔が有根か無根かなどの状態をより詳しく知るために、舌面を刮げたり、拭ったりする方法もあります。
舌診で主となるのは、舌質と舌苔の状態です。舌質(ぜっしつ)は舌体(ぜったい)ともいい、舌の肌肉脈絡組織を指します。舌苔(ぜったい)は、舌体上に付着した苔状の物質のことです。舌質については神・色・形・状態の4つの方面から、舌苔については色・質の2つの側面から観察し、最後に舌質と舌苔から総合的に判断します。
正常な舌象は淡紅舌・薄白苔です。更に詳しくいうと、舌体は柔軟で動きがスムーズ、鮮やかな淡紅色で、大きさや厚みが丁度良く、形態にも異常が見られない状態であり、舌苔は白色で顆粒が均一、うっすらと舌の表面を覆い、有根で拭い去ることができず、適度の湿り気を帯びた状態をいいます。
では、舌質の観察に必要な神・色・形・態について、それぞれ詳細を説明しましょう。
舌神は、舌の柔軟性と動き、舌質の栄枯を表します。
舌色は大きく5つに分類することができます。尚、どのタイプにおいても、青みがかっていたり、暗い感じがあれば、お血があるといえます。
舌形は以下のように分類されますが、特定の病証にしか見られない特殊なものもあります。
老嫩 虚実の判断に用いる。
強硬 舌体が硬く硬直してスムーズに動かず言語が不自由になること。 舌苔はその色と質を観察します。病的な苔の色は、主として白・黄・灰・黒の4色に分類されますが、他に緑苔やばい醤苔なども見られることがあります。
苔質とは舌苔の形質のことで、厚み、潤い、質感、範囲、剥離の有無や取れやすさ、変化などを観察します。
疾病は複雑な発展過程を示し、人体の病理もまた複雑に変化します。そこで重要になるのが、疾病における舌質や舌苔の基本的な変化と、舌質と舌苔の相互関係です。普通、舌質を見ることで正気の虚実と邪気の性質が、舌苔を見ることで邪気の深浅と性質、胃気の存亡が判断できます。従って、舌質と舌苔では判断できることが異なるため、それらを分けて観察する必要がありますが、疾病の分析には両方を総合して判断する必要があります。また一般的な状況下では、病理変化において舌質と舌苔び変化は一致します。例えば、実熱証であれば、舌質紅で舌苔黄干といった具合です。しかし、実際には病理変化と舌質や舌苔が矛盾する状況もあります。そこで四診合参が必要となる訳です。 舌質ごとの舌苔の変化を以下にまとめます。 ●淡白舌と舌苔の関係
●淡紅舌と舌苔の関係
●青紫舌と舌苔の関係
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