【五臓】臓と臓の関係

多くの生理機能はあるひとつの臓腑だけが担っている訳ではなく、2つ以上の臓と臓、蔵と腑の協力の下に行われています。ここでは臓と臓の関係について説明してゆきます。

  • 肝と心
  • 肝と心は、血液循環と精神活動において協力関係にあります。

    心は主血脈作用により、を作って全身に循環させています。循環させた血の余りは肝の蔵血作用によって肝にストックされ、肝が必要に応じて血流量の調節を行います。また、肝には気血の循行をスムーズにする疏泄作用があり、このはたらきによって心の主血脈作用も滞りなく機能しています。

    心は精神の活動の根源となるの拠で、主神志作用によって精神・意識・思惟活動を主宰しています。神は心血によって養われることで正常に機能しますが、この心血は主血脈作用により作り出されたものと、肝が蔵血作用によりフィードバックされたものの両方からなります。主神志作用も肝の疏泄作用によって調節されています。

    月経で肝血が不足すると動悸や不安感など心の症状が現れるのはこのためです。

  • 肝と脾
  • 肝と脾は、消化吸収と血液の生成に関して協力関係にあります。

    血は肝にストックされますが、その血の原料は飲食物で、飲食物から血液の前駆物質を作り出すのは脾の運化作用です。脾には血管から血液が漏れ出ないようにする統血作用もあり、血の生成と消失の予防に関わっています。これは肝の蔵血作用をバックアップするものです。

    肝も疏泄作用によって脾の運化作用や統血作用を助けています。

    過度のストレスがあるとリラックスを好む肝の機能が失調して疏泄作用が低下し、二次的に脾の運化作用も低下させます。ストレスで食欲不振になったり、過食になったりするのはこのためです。

  • 肝と肺
  • 肝と肺は、気の運動において昇降の関係にあります。

    肝には気を上昇させる昇発の性質があり、肺には気を下降させる粛降作用があります。この昇降のバランスが保たれることで人体は正常に機能します。

    緊張すると咳払いをしたくなるのは、緊張によって肝の疏泄作用が失調し、過度の昇発によって肺の粛降作用が抑制され、下降すべき気が上部に逆流することで起こります。

  • 肝と腎
  • 肝には蔵血作用があり、心が全身に循環させたの余りをストックしています。腎には蔵精作用があり、生命活動に欠くことのできない腎精をストックしています。肝血と腎精は互いに転化することで補い合っており、これを肝腎同源あるいは精血同源と表現します。

    男女とも更年期にめまいやのぼせが現れることがあります。これは加齢に伴い有限の腎精が不足することで肝血を補うことができず、肝腎ともに不足が起きて肝の熱エネルギーである肝陽の上昇を抑制できなくなることが原因です。

    目の酷使で肝血を損なうと不足が腎精に及び、同様の症状が現れることもあります。

  • 心と脾
  • 心と脾は、血液と精神活動において密接な関係にあります。

    脾が運化作用によって飲食物から生成した血液のもとは、心の主血脈作用によって機能する血液となり全身に循環されます。この血液によって脾も養われ、正常に機能することができます。脾は血液の生成に関わるだけでなく、統血作用によって血液が血管から漏れ出るのを防いでいます。

    心は主神志作用によって精神・意識・思惟活動を主宰していますが、これは脾が運化作用によって生成した水穀精微の気がもとになっています。

    無理な食事制限で動悸や健忘などの症状が現れるのは、脾が気血を生成することができず、心の血液不足となって精神活動が低下するためです。心労は心の機能失調の原因となり、心血が脾を養えなくなることで二次的に脾の機能失調に発展し、食欲不振や頭がぼんやりするなどの症状が現れれます。

  • 心と肺
  • 心は主血脈作用によって血液循環を、肺は主気作用によって呼吸と全身の気の巡りを統括しています。肺は治節を主り、肺が一定のリズムで呼吸することで心拍や脈拍も規律よく循環することができます。

    疲れた時に急いで歩くと呼吸が乱れて息が上がり、同時に動悸が現れるのはこのためです。

  • 心と腎
  • 心と腎はコンロと水を張った鍋のような関係にあります。

    心は人体上部に位置し、五行の火に属して熱エネルギーである陽気を統括するため陽中の陽臓といわれます。これに対し、腎は人体下部に位置し、五行の水に属して水液代謝を統括するため陰中の陰臓といわれます。鍋に水を張って火に掛けると水蒸気が出るように、心の陽気によって腎の津液が温められることで正常な生理活動が行われます。

    加齢や急急性患などで心陽が不足して腎陰を温められなくなると生理活動は低下します。鍋に冷たい水が溢れた状態になるため、冷えや動悸、尿量減少、むくみなどの症状が現れます。反対に、房事過度や医薬品の誤用、副作用では腎陰が不足しやすく、鍋の水がすぐに沸騰する状態となり、のぼせやほてりなどの熱症状、動悸、不眠などの症状が現れます。

  • 脾と肺
  • 脾と肺は、気と津液に関して協力関係にあります。

    脾は運化水穀作用によってを作り出し、肺は主気作用によって全身の気を循環させています。また、脾は運化水液作用によって津液を作り、肺の宣発・粛降・行水作用によって津液は全身に運搬されます。

    無理なダイエットを続けると倦怠感や息切れが起こるのは、生成不足によって全身に循環するための気が不足するからです。脾為生痰之源、肺為貯痰之器と表現されるように、過労や食事の不摂生で脾の運化作用が低下すると、正常な津液ではなく病理産物である痰が生成されて肺に運搬されます。痰は呼吸器疾患で見られる病理産物ですが、中医学的には脾に問題があることも少なくありません。

  • 脾と腎
  • 脾と腎は精に関して協力関係にあります。

    腎には、発育・成長・生殖などに関与する、受精時に両親から受け継いだ有限の生命エネルギーである先天之精が貯えられています。脾は運化作用によって飲食物から後天の精を作っています。有限の先天の精は、理論上無限の後天の精によって補填されています。生命活動の根源となる先天の精からは腎陽が作られ、腎陽が脾陽を温煦することによって脾の運化作用は促進されます。

    先天の精は加齢に伴い減少するため、年配者では脾の機能低下が起こり食が細くなります。

    無理なダイエットで脾の運化作用が失調すると、先天の精を補えなくなるために生殖機能が失調し、月経が遅れたり、止まったりすることがあります。

  • 肺と腎
  • 肺と腎は、呼吸と水液代謝において協力関係にあります。

    肺は気の主、腎は気の根といわれ、呼吸は肺の主気作用と腎の納気作用によって調節されています。肺の宣発作用によって不要になった濁気を吐き出し、腎の納気作用によって大気中の清気を人体奥深くまで吸い込むことができます。

    また、肺は水の上源、腎は水は主水の臓といわれます。肺は津液粛降・行水作用よって腎に運搬します。腎は主水作用によって津液と不要な湿濁に分別、まだ活用できるものは蒸騰作用によてリサイクルし、湿濁を尿として膀胱から排泄させます。

    主に先天の精の不足が原因となる小児喘息では、先天の精を貯蔵する腎の納気作用が低下するため、発作時にはうまく息を吸い込むことができなくなります。

    かぜをひいて肺に熱や痰などの病理産物が停滞すると、水液代謝が失調して尿量が減少することがあります。